2007年10月2日火曜日

ただいま報告

中欧旅行から帰ってきて以降、初のエントリです。

なんというか今年の夏休みは、「授業がない」という意味では「休み」だったかもしれませんが、「のんびりできる」という意味では、普段以上に「休み」が無かったような気がしますね。激しく。

しかし、9月いっぱいを修行と旅行に費やした結果、ネットや新聞といったメディアからほぼ1ヶ月間隔離されて過ごしたわけですが、そのあいだに世の中は大きく変わったようで、今日はそのことについて泥縄ながら考察してみたいと思います。


とりあえず、日本国内におけるこの9月で最大のニュースといえば、それは首相の交代であろう。
かなりの程度に国家主義的な思想を持ち、「美しい国」なる壮大な(?)フレーズを掲げて華々しく登場した安倍前首相に代わり、どちらかというと地味な、しかし穏健そうな福田さんが総理大臣の座に着いた。
安倍さんが総理の座を辞し、そして新たな総理大臣に麻生氏ではなく福田氏が任命されたことの直接的な原因としては、前回の参院選における自民党の大敗が挙げられると思うのだが、では、この「自民党大敗」→「安倍氏の総理辞職」→「首相に福田氏」という流れは、何を要因とし、そしてどこへ向かおうとしているのか

まず思いつくのが、安倍内閣の閣僚の相次ぐ不祥事。これを契機として参院選の大敗につながったとするならば、不祥事を一過性のものと捉えると、自民党にとってはまだ反攻の余地があるということになる。

しかし、現実はおそらくそれだけではない。
参院選敗退に始まる自民党の惨憺たる状況は、やはり地域格差拡大が招いた地方の「自民離れ」を主たる要因としているように見える。

例えば以前このエントリにおいて姜尚中氏の講演の感想を書いたが、その講演において同氏は「地方へ講演に行くと、保守のグラスルーツ(草の根、支持層)が格差にうめいているのがわかる」と述べられていたし、また、先の参院選でも戦局(選挙区?)の明暗を分けたのは一人区の情勢であった。
(ちなみに、僕は読んでいないが、安倍前総理の著作とされる『美しい国へ』を読んだ僕の大学の某教員の感想は、「前半では、ある程度具体的な政策があることがわかる。後半では、彼がどれだけ国民生活の現状を知らないかがわかる。」というものだった。)

しかし、ここから先は私見が多分に入るが、先に挙げた「流れ」というのは、単に「閣僚の不祥事」と「地域格差の拡大」のみで説明できるものでもないだろう。
おそらく、この流れの3つ目の要因として、「国家主義・権威主義への反攻」というのが挙げられるのではないだろうか。
一時期は、日本国周辺のきな臭さによってか、「国あって国民あり」、「共同体の利益は個人の利益をはるかに優越する」、「権威は正義である」といったような権威主義的な議論が、ネットなども巻き込んでかなりの勢力を保っていた。
9条改正にこだわったり、北朝鮮に対して強硬姿勢をとったり、太平洋戦争への反省色が薄かったり、国家あって国民ありといったような思想を持つ(と、姜氏に指摘された)安倍首相は、まさに勃興する権威主義的議論と親和的であった。

しかし、みんなでよく考えてみた結果、やはり周辺事態云々の話よりも、まず日々の暮らしだろう、という結果に落ち着いた、のかどうかは知らないが、昨今、このような権威主義的主張は周囲から猛反撃を食らって失速中である。
権威主義陣営が期待を寄せていた安倍首相と彼率いる自民党は大敗したし、教科書における「集団自決への軍関与」削除への反発なども、国家主義・権威主義への反撃と理解できないこともない。

こことの関連で僕が気になるのが9条改正問題である。
なぜなら憲法9条は中国や北朝鮮の脅威を理由に、ことに権威主義的な主張において改正が声高に要求されていたわけで、中国朝鮮そのままに日本国内の情勢のみが変わった今でもその改正論議は妥当するはずである。
しかし、フィーリングとしては、おそらく今後当分の期間、9条改正が緊急の課題として議論されることはないだろうと思われる。
そうだとるすと、やはり中国・北朝鮮脅威論をことさらに煽っていた人がいるんじゃないかなあと、そう穿ってしまうのが今日の結論なのでした。

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