ルネッサンス
『アヒルと鴨のコインロッカー』を英訳すると、「Coinrocker of duck and duck」になるのだけれど、例えばこの作品が海外で出版されたり、あるいは映画が海外で公開されたりした場合はどうなるのだろうか。
そういうことには関係なく、今日のエントリは映画『ルネッサンス』の感想。今年の夏は映画も熱い。
この映画も『アヒルと鴨~』に続いて結構なマイナー映画である。
まあそれもそのはずで、「無名の監督が作った」「白黒の」「アニメーションフィルム」という諸々の属性を有する映画が、『ヱヴァンゲリヲン』や『真救世主伝説・北斗の拳』さえ完全なメジャー作品として公開されない国において、メジャー作品になり得るはずが無い。
まあ残念といえば残念だが、一般の人が観に行かないマイナー映画をわざわざ観に行く、というのもそれなりに乙ではある(自己満だけど)。
それで、具体的にどういう映画かというと、「2054年、パリ。超巨大企業に勤める若手研究員のホープが誘拐された。この事件の捜査に当たるのは、敏腕警部、バーテレミー・カラス。暗い過去を持つ彼の捜査と、当該大企業の思惑、謎を知る天才博士。その裏にあるものは?」・・・・って、それなんて攻殻機動隊?
いや実際、この映画『ルネッサンス』が、近年公開された前衛的SFおよびアニメーション映画から多大な影響を受けているのはまぎれもない事実であって、例えば主人公がキャプテンを務める捜査班は攻殻機動隊チックだし、前に挙げた超巨大企業・「アヴァロン社」はモロ『バイオハザード』の「アンブレラ社」に類似している(リンク先のトレーラーでも見られるが、CMの形式はソックリ。バイオテクノロジーを扱うという点でも共通している)。光学迷彩(作中では「ステルススーツ」)も登場し、その効果音はまさに攻殻。敵のアーマーは映画『ファイナルファンタジー』(2001)のそれに似ているような・・・・
もちろんこの分野ではおなじみの『ブレードランナー』の影響もきっとあって、それは例えば近未来の夜のパリに漂う雰囲気や主人公の哀愁なんかに如実にあらわれている。気がする。
しかしもちろんこの映画に新しい要素も色々あるわけで、おそらくその第一は「ヨーロピアンテイストな近未来市街」とでも言おうか、ヨーロッパ的な味わいを残した近未来の町並み、そういうものの確立だろう。
というのも、前述したように、以前からこのテの映画ではサイバーパンクの古典?であるところの『ブレードランナー』の影響が強く、よって映画の背景となる町並みなんかも、ブレードランナーのそれ(新宿歌舞伎町や香港に似ているといわれる)があるため、アジアンなものが多かった。
それらはいわゆる無秩序でカオスな町並みであり、色とりどりのネオンが艶かしく煌き、薄暗い小道が延々と無造作に広がっている世界である。
この世界観、日本においては『攻殻機動隊』や『イノセンス』といった押井作品に引き継がれ、ハリウッドでは『A.I.』にその欠片を見ることができる(ただし、『A.I.』では、この種のデザインにこだわりがあまり無い)。
これら「アジアンな近未来市街」とは別に、「とりあえずメタリックでハイテックな建物を林立させて見ましたが何か?」という「アメリカンな近未来市街」というものも観念できるのだが、これは小奇麗過ぎて中身がなく、魅力を感じさせない。通り一遍すぎて面白みが無い。(e.g. 『マイノリティー・リポート』)
前置きが長くなったが、では一体「ヨーロピアンテイストな近未来市街」とは何か。
一言で説明するのは難しいのだが、アジアンな未来都市との比較でいえば、「秩序的」、「ロゴス的」、「どちらかというと清潔な印象」、「新旧の混在」、「キリスト教文化」、などが挙げられるだろう。
このうち、「新旧の混在」なんかはアジアンテイスト(たとえば攻殻)にしてもありそうだが、アジアでは「新旧の混在」が「新しい建物と古い建物の混在」という意味であるのに対し、本作(ヨーロッパ)にいう「新旧の混在」は「新しい建物のデザイン中に根付く古い建物的なデザイン」のことである。
本作『ルネッサンス』におけるパリ市街は、確かに一部混沌とした要素を含むものの、外形的には無機質で幾何学的であり、全体として厳密な計算の上に成り立っている。
建物の描かれ方にしても、ハンドメイドな感覚が前面にであるアジアと、すべての線が関数曲線的に表現されている『ルネッサンス』とでは、どちらが優れているというわけではないが、かなりの違いがある。
あとストーリーだが、ラストがなかなかよかった。そういうオチだとは。
あれだけ引いて、まさにどんでん返しの好例。
しかし、そこにいたるプロセスは、まあ、ありがちではある。
また、「モノトーンの映像革命」ということで、ほぼ前編が白と黒(グレーゾーンは、おそらく意図的に、かなり少なくされている。これによってよりシャープな映像になっている)であり、まあ確かに新しいんだろうけど、しかし「映像革命」というほどのものかは微妙。
ガラスが割れたり火事になったり、色々と工夫はしてあるのだけれど、それは「映像技術」というよりは、むしろ「演出」に属する分野なのではないだろうか。(デザインはいいんだ、デザインは。)
むしろ意地悪な人間であれば、「作るの楽だったんじゃない?」とか言いそうだし、実際FLASH職人のプロであれば、ああいうの作る人居そうだよねえ、と思ってしまった。
それでも「一見の価値」というのは否定できないんで、好きな人はどうぞ。
ということで、75点、ですかね。ホント適当だけど。
おまけ。『ルネッサンス』から動画。
それで、具体的にどういう映画かというと、「2054年、パリ。超巨大企業に勤める若手研究員のホープが誘拐された。この事件の捜査に当たるのは、敏腕警部、バーテレミー・カラス。暗い過去を持つ彼の捜査と、当該大企業の思惑、謎を知る天才博士。その裏にあるものは?」・・・・って、それなんて攻殻機動隊?
いや実際、この映画『ルネッサンス』が、近年公開された前衛的SFおよびアニメーション映画から多大な影響を受けているのはまぎれもない事実であって、例えば主人公がキャプテンを務める捜査班は攻殻機動隊チックだし、前に挙げた超巨大企業・「アヴァロン社」はモロ『バイオハザード』の「アンブレラ社」に類似している(リンク先のトレーラーでも見られるが、CMの形式はソックリ。バイオテクノロジーを扱うという点でも共通している)。光学迷彩(作中では「ステルススーツ」)も登場し、その効果音はまさに攻殻。敵のアーマーは映画『ファイナルファンタジー』(2001)のそれに似ているような・・・・
もちろんこの分野ではおなじみの『ブレードランナー』の影響もきっとあって、それは例えば近未来の夜のパリに漂う雰囲気や主人公の哀愁なんかに如実にあらわれている。気がする。
しかしもちろんこの映画に新しい要素も色々あるわけで、おそらくその第一は「ヨーロピアンテイストな近未来市街」とでも言おうか、ヨーロッパ的な味わいを残した近未来の町並み、そういうものの確立だろう。
というのも、前述したように、以前からこのテの映画ではサイバーパンクの古典?であるところの『ブレードランナー』の影響が強く、よって映画の背景となる町並みなんかも、ブレードランナーのそれ(新宿歌舞伎町や香港に似ているといわれる)があるため、アジアンなものが多かった。
それらはいわゆる無秩序でカオスな町並みであり、色とりどりのネオンが艶かしく煌き、薄暗い小道が延々と無造作に広がっている世界である。
この世界観、日本においては『攻殻機動隊』や『イノセンス』といった押井作品に引き継がれ、ハリウッドでは『A.I.』にその欠片を見ることができる(ただし、『A.I.』では、この種のデザインにこだわりがあまり無い)。
これら「アジアンな近未来市街」とは別に、「とりあえずメタリックでハイテックな建物を林立させて見ましたが何か?」という「アメリカンな近未来市街」というものも観念できるのだが、これは小奇麗過ぎて中身がなく、魅力を感じさせない。通り一遍すぎて面白みが無い。(e.g. 『マイノリティー・リポート』)
前置きが長くなったが、では一体「ヨーロピアンテイストな近未来市街」とは何か。
一言で説明するのは難しいのだが、アジアンな未来都市との比較でいえば、「秩序的」、「ロゴス的」、「どちらかというと清潔な印象」、「新旧の混在」、「キリスト教文化」、などが挙げられるだろう。
このうち、「新旧の混在」なんかはアジアンテイスト(たとえば攻殻)にしてもありそうだが、アジアでは「新旧の混在」が「新しい建物と古い建物の混在」という意味であるのに対し、本作(ヨーロッパ)にいう「新旧の混在」は「新しい建物のデザイン中に根付く古い建物的なデザイン」のことである。
本作『ルネッサンス』におけるパリ市街は、確かに一部混沌とした要素を含むものの、外形的には無機質で幾何学的であり、全体として厳密な計算の上に成り立っている。
建物の描かれ方にしても、ハンドメイドな感覚が前面にであるアジアと、すべての線が関数曲線的に表現されている『ルネッサンス』とでは、どちらが優れているというわけではないが、かなりの違いがある。
あとストーリーだが、ラストがなかなかよかった。そういうオチだとは。
あれだけ引いて、まさにどんでん返しの好例。
しかし、そこにいたるプロセスは、まあ、ありがちではある。
また、「モノトーンの映像革命」ということで、ほぼ前編が白と黒(グレーゾーンは、おそらく意図的に、かなり少なくされている。これによってよりシャープな映像になっている)であり、まあ確かに新しいんだろうけど、しかし「映像革命」というほどのものかは微妙。
ガラスが割れたり火事になったり、色々と工夫はしてあるのだけれど、それは「映像技術」というよりは、むしろ「演出」に属する分野なのではないだろうか。(デザインはいいんだ、デザインは。)
むしろ意地悪な人間であれば、「作るの楽だったんじゃない?」とか言いそうだし、実際FLASH職人のプロであれば、ああいうの作る人居そうだよねえ、と思ってしまった。
それでも「一見の価値」というのは否定できないんで、好きな人はどうぞ。
ということで、75点、ですかね。ホント適当だけど。
おまけ。『ルネッサンス』から動画。
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