GENIUS PARTY
明日からウズベキスタンの学生と交流セミナーを催す予定なので、再び更新が滞る可能性がありんすが、そこはまあ、よろしくお願いいたします。
忙しくなる前に行っとこうと思って昨日観に行ってきたのが、今日ご紹介するスタジオ4℃がおくる先進的アニメオムニバス作品、『GENIUS PARTY』。
夏休み映画3本目。あと『ベクシル』と『HERO』も見たいしなあ。オプションで『ヱヴァンゲリヲン』あたりか。
それにしても、夏休みに入ってからマイナーな映画ばかり見ているが、全然ハズレがない。
ハリウッド資本を筆頭とする単純なビジネスではなく、何かを表現したいから、そして映画が好きだから作品を撮った、という心意気が感じられる。
それに、マイナー映画を上映する映画館は、スクリーンが1つか2つで、横にドリンクショップあり、客はまばら、それにアットホームな空気・・・、等々、雰囲気がシネコンよりもずっとよろしい。非常に儲からなさそうだが、しかし頑張って続けていただきたいものである。
さて、本題の『GENIUS PARTY』だが、オムニバス作品ということで、短編アニメ7編から構成されている。
各編の監督は、どうもその世界では天才"GENIUS"と呼ばれるような人らしいが、それほどアニメに詳しいわけではないので誰も知らない。
かろうじて、音楽で参加している菅野よう子と、声優参加の柳楽優哉、菊地凛子、山口智充は分かるのだが。
まあ、映画の第一義的な目的は、何かを感じられるかどうか、俗的に言えば楽しめるかどうかだと僕は信じるので、そのへんは気にしないのである。
と、いうわけで、以下各編の感想。(上映順、タイトル横カッコ内は監督)
#1. GENIUS PARTY (福島敦子)
オープニングということで、この作品のみ、いわゆるストーリーモノではない。
ストーリー性というものを一種の因果連関と捉えれば、まあストーリーがないとは言えないのだが、それでも他の作品と比べて相対的にストーリー性が薄い。
それで、この作品は音楽に合わせて(?)画を動かしていくのだが、その割にはノリが悪い。
キャラクターデザインや、視覚効果、世界観は意味不明で素敵だとは思うのだが、しかし流れる音楽に乗れていない。あるいはリズムには乗れているとしても、視覚的に「弾け」が足りない。
全体的に中途半端な感があり、なんというか、もっと開放感・爽快感が欲しかった。
これだけ観たとき、「今日は映画選択ちょっとハズったかな」とか思った。
#2. 上海大竜 (河森正治)
分野としては、ロボットSF、ヒーローモノ、ということになるのだろうか。監督も『マクロス』の人らしいし。
しかし見せ場、というか僕が一番好きなシーンはロボットとかドンチャンとかの、その後。美術的にも流れ的にも。
いや、もちろん各種ロボット、アンドロイド、宇宙船、戦闘シーン等の描写もなかなかで、特に3Dで描かれた敵巨大戦艦ロボットや、ダンディーな人造人間(?)はかなりクール。
それでもやはりロボットの出ていないシーンの方が好き。
そして彼らはどこへ消えたのか。
#3. デスティック・フォー (木村真二)
おそらく7編の中で一番crazyな作品。おそらく監督は相当キてる。He's got so stoned.
ダークな世界に住むキモかわいいゾンビーズの超絶イミフな物語・・・ってなんだそりゃ。
しかしまあ、よくこんな設定というか世界観を思いついたもんだとしみじみ思う。並みの頭、並みの発想ではこんなん思いつかんだろうに。
どこかにも書いてあったけど、なんとなく東欧テイストでもある。
独特の映像、独特のストーリー、はいもう結構なものを見せていただきました。確かにGeniusだ。
#4. ドアチャイム (福山庸治)
一作品だけ仲間はずれを出すとしたらこの作品か。
短編アニメとしては、ストーリーが最も「一般的な」、つまり普通の作品。(ストーリーの内容が高頻度で起こる、というわけではなく、「よくある作品」というような意味。e.g.「あるあるwww」)
しかしキャラクターは不気味の谷。そこがまた、作風に奥行きを与えている、ともいえる。
『デスティック・フォー』と『LIMIT CYCLE』という2大奇抜に挟まれて、なんとなくかわいそうな感じがする。
しかし主人公の立場にはなりたくねえな。
#5. LIMIT CYCLE (二村秀樹)
パスカル?アウグスティヌス?グノーシス?ストア派?っていうか中二病??
ニット帽の人物にはよくあることだが、監督はキまっているのか、それとも単にキまっているのをキメているだけなのか。おそらく後者のような気がする。CrazyにもGeniusにもなりきれていない。
いや、確かにヴィジュアルは特異なものがありGoodで、よく似たパターンを避けて陳腐化を防ごうという試みも散見されるのだが、それでもやはり抽象的なところではかなり陳腐化してるし、これを10分以上続けられると疲れる。ていうか酔う。
車酔いする人は注意だろ、この作品。
#6. 夢みるキカイ (湯浅政明)
シャープな映像美、というよりはファンタジー色の濃い一作。
同時に、全7編中一番お気に入りの作品でもある。
なんというか、深い。
絵だけ見ると絵本みたいな、ライトな作風なのだが、ストーリーは非常に深い。気がする。少なくともそう読める作品ではある。
そう、社会という砂漠に生み出され、楽あり苦あり、一生懸命生きる。友達を救うためには空だって飛べるけど、それにしたって救えない時はある。
長く生き、ボロボロになってもこう叫ぶ。「これが人生か、さればもう一度」(ニーチェ)
#7. BABY BLUE (渡辺信一郎)
真打ち登場。2番目に好きな作品。
柳楽優哉と菊地凛子を声優起用したことで注目を集めた(?)本作、見事にアタリである。
柳楽の、高校生にいそうな、ボソボソっとした、しかし内に何か秘めてそうな喋り方も、また、菊地のハスキーで、これもまた高校生にいそうでいない色気のある喋り方も、両方見事に作風とマッチしていた。
声の出ない高校生役で注目された菊地凛子(『Babel』ね)が、今度は声「しか」でない声優で女子高生役に挑戦している、というのが面白い。
セリフもクサいけど、うまい具合にはまってるし。監督の力量だろうか。
『耳をすませば』のワンシーンとよく似た場面があったけれど、あれはオマージュだろうか。作品そのものが似ていなくもないもんな。
8番目の「作品」として、エンディングテーマ、二千花の『Genius Party』が強烈。
この映画と激going with。
映画と共通する一種のチープさ、軽さと並行する重厚さ、意味不明だけどグッとくる何か、爽快なオプティミズム、クリエイティヴィティ、など、この映画にこの曲以上に当てはまる曲は見つけられまい、といっても過言ではない気がする。
とりあえず、YouTubeへのリンクを貼っておくので、興味のある方は参照どうぞ。
あと、歌詞中に「7つの海」「7つの女神」「7つの星」「7days」といったGenius Party7編を思い起こさせるフレーズが出てくるのだけど、7つの海は実際にあるし、7daysは一週間だし、7つの星は北斗七星だろうか、よくわからないが、一番意味不明な「7つの女神」って何だろうか。
ド~シまでの音階の種類が7?知っている方は教えてください。
あと感想としては、パンフレットが1500円とかなり高めだった。
学割+クーポン割でチケット代も1500円。映画一回で合計3000円の出費は結構痛いよなあ。
それでも中毒みたいなもんだから仕方がないか。
また7編収録した続編も出るらしく、今からかなり楽しみ。
エンディングテーマはどうなるのか。また二千花が歌うのか。
最後に、タイトルの『GENIUS PARTY』は全部大文字なのか一部大文字なのか、『デスティック・フォー』の「デスティック」は「Deathtic」なのか「Dethtic」なのか、表記の揺らぎが気になった。
特に後者はタイトルとして重要だと思うんだがどんなもんなのか。
採点は・・・オムニバスだし、各作品の評釈から推して知ってください。
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