ウズベキスタンその１

昨日だったか、ウズベキスタンの友人からメールが届いた。
この「ウズベキスタンの友人」というのは「ウズベキスタンに住む日本人の友人」というわけではなく、「ウズベキスタンに住むウズベキスタン人の友人」である。
留学生支援サークルで国際交流セミナーなんかに参加している僕にはウズベキスタン人の友達が結構多く、おそらく外国人の友達中で最大の割合を占めるのはウズベキスタン人だと思われる。
なお、念のために申し上げておくと、僕自身はウズベキスタン人ではなく日本人であり、ここ20世代くらいのご先祖様は日本列島で生まれているはずである（証拠があるわけではないが）。

で、メールの内容はというと、この前石川県のほうで発生した地震の情報がむこうにも行っているらしく、わざわざ僕たちの安否を気遣ってくれているものだった。
地震のことを"horrible disaster"とか形容するあたり、ウズベキスタンは安定陸塊で地震が発生しない国なのかなと思ったのだが、どうもそうではないらしい（資料、それでも日本ほどではないようだが）。

それはそうとして、ウズベキスタン人でもいろんな人がいる。
ことに宗教に対する姿勢の違いは、あまり宗教色のない生活をしている僕にとってなかなか興味深いものがある。

ウズベキスタンの主な宗教はイスラム教スンニ派であるが、以前研修生として来日したかの国の女性はアルメニア正教徒であった。
また、ウズベキスタンにはソ連によってウズベキスタンに強制連行されてきた朝鮮人の子孫も結構住んでいるらしく、それらの人々が全員イスラム教徒かというと、そうでもないだろう。

また、同じイスラム教徒でも信心の度合いがかなり違っていることがある。
例えば、チャーシューを前にして「君はイスラム教徒だから豚は食べないんだよね？」と聞いたところ、「僕はモダンなウズベキスタン人だから美味しいと思ったものは何でも食べるよ」と答えられたこともあった。
一方で、ある友人は「法律には書いていないけど、憲法の上にはコーランがあるんだ」とか「イスラムのお祈りをしていると、他の宗教では味わえないようなピュアな気持ちになれるんだ」なんて言っていた。

以前トルコへ行ったときのガイドさんも、「イスラムの戒律の中から自分が正しいと思ったものだけをチョイスして実行します。だからお酒・タバコは大好きです。しかし豚は食べません」と言いながらタバコをふかしていたし、やけに「政教分離原則」を自慢していた。

トルコの例をもう一つ挙げるとすると、カーリエ博物館の一件が思い出される。
この博物館、以前はキリスト教の教会であったのだが、オスマン帝国によるイスタンブール征服後はモスク（ジャーミィ）に、さらにトルコ共和国成立後は宗教的に中立な「博物館」になったという複雑な経緯を持っている（かの有名なアヤ・ソフィア博物館と同じ流れである）。
この博物館へタクシーで行った時、運転手さんに「カーリエ・ミュージアムへ」と頼んだら、「カーリエ・ジャーミィだ」と訂正された。

僕は宗教的・エスノセントリズム的な主張がかなり嫌いな人なのだが（もちろんするのは各自の自由だとしても、法律の勉強をしに来日するウズベキスタン人なら少々考えて発言すべきだと思うのだが）、このように宗教色を忌避するのもまた一種の西欧起源の文化であるとすると、結局地震の話から始まって最後は相対化の沼へ沈んでいく3月末のある日。

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