2008年1月31日木曜日

チェーザレ 破壊の創造者

ストラトスフィア』が好きです。(こんばんは)

テスト週間につき『今月の本』はお休みとさせていただいて、そのかわりといってはなんですが、モーニングにて好評(不定期)連載中の『チェーザレ 破壊の創造者』の書評(漫画評)エントリといきます。


チェーザレ・ボルジアといえば、高校の世界史ではほとんど登場しないものの、そのカリスマ性とドラマティックな人生、その他塩野七生『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』等の名著で一部に熱狂的ファンを持つ「ルネッサンスのメフィストメレス」(こちら参照)。
無数の小さな都市国家が分立していたルネッサンス期のイタリアにおいて、強力なリーダーシップと冷徹な策略でイタリア統一を目指した男。
ニコロ・マキャヴェッリ(この人も色んな発音方法があって迷いますな)の主著、『君主論』において「理想の君主」と言われた人でもあります。

そんなチェーザレ・ボルジアの学生時代からを描いた歴史マンガが、この惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』。
前々からこの作品の存在自体は知っていて、読んでみたいなとは思っていたもののさりとてわざわざ買ってくるほどでもなく。
そんな中、そのへん共通の趣味を持つ父がこれを見つけて購入、そのおこぼれにあずかったというわけです。
しかし、これは好きな人はどっぷりハマってしまいそう。

物語はピサの大学に一人の青年、アンジェロが入学してくるところから始まります。
このアンジェロ、ひょんなことからスペインの有力貴族の一員で、この大学の学生でもあるチェーザレ・ボルジアと親しくなってしまい、色々な事件に巻き込まれていくことになるのですが・・・


と書くと、なんだか学園モノのようにも聞こえます。確かにこのマンガは一種の学園モノと言えるのかも知れませんが、しかしそれでも単なる学園モノではない。既刊4巻では主人公達は未だ学生ですが、そもそもチェーザレ・ボルジアは軍人にして政治家。学園モノで終わるはずがないのです。

では、そもそも、このマンガはどんなカテゴリーに分類されるのか。この点がこの作品の最も面白いポイントであると言えるでしょう。
と、いうのも、この作品は極めて多くのジャンルをまたにかけており、初期は学園モノの雰囲気を漂わせつつも、ルネッサンスの歴史・文化について極めて詳細に解説していたり、裏ではチェーザレの父、アレクサンドルが暗躍していたり、あるいは当時の大学が男子大学であることからしてほのかにBLの香りが漂っていたり、チェーザレの可愛い妹(ルクレツィア・ボルジア)が「お兄ちゃんと結婚したい(要旨)」など言い出したりと、一つの作品の中に様々な要素が含まれておるわけであります。
この作品には是非とも、この「大河ドラマ」あり「禁断の愛」あり「泥沼」あり「友情」ありといった多面的な流れを維持して頂きたいところです。


また、マンガといえばストーリーだけでなく絵も重要になってくるのでありますが、この点については好き嫌いが分かれそう。
僕なんかは結構好きな絵柄なんですが、デスノやワンピースあたりの「見やすい絵」に慣れてしまっていると、作者(惣領冬実先生)の絵は少々キツい(濃いというかなんというか。)かもしれません。
少女マンガにありそうな抜群のスタイルとかじゃなくて体つきとかも結構リアルだし。

とりあえず、歴史好きで、長期連載かつ不定期連載に耐えることができるなら、この作品は大いにお薦めできます。

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